コラム
2026/01/07

建設業の労災事故・安全配慮義務

 建設現場では、墜落・転落、重機の巻き込み、飛来物による負傷など、多様な労災リスクが日常的に存在します。労働災害が発生した場合、企業には重大な法的責任が問われる可能性があり、適切な体制構築や迅速な事故対応が欠かせません。本記事では、建設業での労災事故と安全配慮義務について、専門的視点からわかりやすく解説します。

1.建設現場での労災リスクと企業責任

 建設現場は、高所作業、重機オペレーション、重量物の取り扱いなど、多種多様な危険が存在する労働環境であり、他産業と比較して労災発生率が高いという特徴があります。そのため、企業は、労働者の生命や身体を危険から保護するために、労働基準法・労働安全衛生法に基づく安全配慮義務を負っています。具体的には、作業員に対する安全教育・指導の実施、機械設備の安全点検、防護具の着用管理、危険予知活動の徹底、現場責任者による監督など、労働者が安全に働ける環境を整える責任があります。企業がこれを怠った場合には、民事・刑事上の責任を負う可能性があります。

2.労災事故発生時の対応・報告義務

 労災事故が発生した場合、企業はまず従業員の救護を最優先し、必要な応急処置を施した上で、直ちに現場の安全な状態を確保しなければなりません。同時に、事故の発生状況を正確に把握するため、写真撮影や関係者からの聞き取りなど、事実関係の記録・保存を速やかに行うことが重要です。
 その後、関係者への連絡や社内報告を経て、法令に基づいた行政機関への届出が求められます。特に死亡事故や休業4日以上の負傷事故については、労働基準監督署へ労働者死傷病報告を提出する義務があります。また、重大災害に該当する場合には、速やかに監督署へ通報する必要もあります。これらの義務を怠ると、企業は行政処分や刑事罰の対象となりうるため、迅速かつ適切な対応が欠かせません。
建設現場では元請と下請が入り混じる構造が一般的なため、事故後には両者の責任関係が問題となることも多く、指揮命令系統や安全管理の実態を踏まえた慎重な判断が必要になります。

3.安全配慮義務違反の法的リスク

 安全配慮義務を果たさないまま労災事故が発生すると、企業は重大な法的責任を負う可能性があります。まず民事面では、被災した労働者や遺族から損害賠償請求を受けることがあり、治療費や休業損害、後遺障害に対する慰謝料、さらには将来の逸失利益まで、労災保険では補填されない大きな金額を追加で負担しなければならないケースもあります。請求額が数千万円に及ぶことも珍しくありません。
加えて、企業側の安全管理体制に問題があった場合、労働安全衛生法違反や業務上過失致死傷などの罪により、現場責任者や経営者が刑事責任を問われる可能性もあります。行政上も、監督署からの改善命令や作業停止命令が出ることがあり、建設業許可や入札参加資格への影響など、企業の社会的信用に深刻なダメージを及ぼすおそれがあります。
 これらのリスクを踏まえると、安全配慮義務の履行は企業経営において極めて重要な位置を占めるといえます。

4.弁護士による事故対応・賠償交渉サポート

 労災事故が発生すると、企業は被害者・遺族対応、行政手続、社内調査など、多方面の対応に追われます。被害者側との感情的なすれ違いや、元請・下請間での責任調整など、紛争が複雑化しやすいことも特徴です。また、証拠の確保や行政調査・刑事手続への対応には法律的な判断が不可欠であり、適切な賠償額の見通しを立てることも容易ではありません。
 弁護士が介入することで、事故状況の分析、証拠の整理、企業の法的責任の範囲を明確化し、企業の立場を不当に損なわないよう交渉・手続を進めることができます。被害者側との協議や示談交渉を代理し、企業担当者の負担を大きく軽減します。また、労基署対応や行政調査への同行、説明内容の整理などもサポートし、企業の主張が適切に伝わるよう助言します。裁判に発展した場合には、法的根拠に基づいた効果的な主張立証を行い、企業の利益を守ります。

5.実務での労災トラブル解決事例

 実務では、建設現場での墜落事故、重機との接触事故、足場の崩落などが典型例として挙げられます。例えば、高所作業中に安全帯を着用していなかった事故では、元請が十分な指導監督を行っていなかった点が問題となり、賠償額が大幅に増加した例があります。また、事故直後に証拠を確保していなかったため、企業側の主張を裏付ける資料が不足し、紛争が長期化したケースも存在します。
一方で、弁護士が早期に介入した事案では、作業手順書、安全教育記録、危険予知活動の内容などをもとに責任の所在を整理し、被害者側との交渉を円滑に進めたことで、企業にとって不当に重い責任が課されることを回避し、適切な解決へ導いた例もあります。

6.建設業の労災事故・安全配慮義務を弁護士に依頼するメリット

 建設業における労災事故は、現場の構造や契約関係が複雑であるため、法的責任の判断には高度な専門知識が必要です。弁護士に依頼することで、事故直後の初動対応から、被害者側との交渉、行政手続、社内調査に至るまで、一貫して適切な対応を進めることができます。
 弁護士は、企業が不利な状況に陥らないよう、証拠収集の方法、事故原因の分析、責任範囲の整理などについて専門的な助言を行います。また、企業の安全管理体制を見直し、再発防止策を整備することで、将来の事故リスクを軽減することにもつながります。裁判に至った場合でも、法的根拠に基づいた戦略的な対応を行える点は、企業にとって大きな安心材料となります。

7.建設業の労災事故・安全配慮義務は法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください

 労災事故は企業に深刻な影響を及ぼす重大な問題であり、事故対応の適否によって企業の法的責任や社会的評価は大きく変わります。当法律事務所は、建設業の労災事故に精通した弁護士が、事故発生直後の相談から行政対応、被害者との交渉、裁判対応、再発防止策の構築まで、企業を総合的にサポートいたします。
 建設現場で事故が発生した場合、あるいは安全配慮義務や安全管理体制について不安がある場合には、早期相談が紛争の拡大防止につながります。建設業の皆さまは、ぜひ法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。

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