コラム
2025/12/08

建設業における土地・建物売買のトラブル

1 はじめに

 建設業において、土地や建物の売買は事業の根幹に関わる重要な取引です。用地の仕入れから、建築後の分譲・販売、あるいは自社ビルや資材置き場の確保まで、その目的は多岐にわたります。
 しかし、不動産取引は動く金額が大きく、ひとたびトラブルが発生すれば、企業の資金繰りや社会的信用に甚大な影響を及ぼしかねません。
 本記事では、建設業特有のリスクを踏まえ、売買契約におけるトラブルの実態と、それを未然に防ぐための法的対応について解説します。

2 建設業における売買契約のリスク

 建設業者が当事者となる不動産売買では、一般的な個人間の取引とは異なる特有のリスクが存在します。以下のようなリスクを契約段階で見落とすと、事業計画そのものが頓挫する恐れがあります。

(1)開発許可や建築規制の問題
 購入した土地に予定していた建物が建てられない、あるいはセットバックが必要で有効敷地面積が減るといった、法規制(都市計画法・建築基準法)に関わるリスクです。
(2)近隣住民との境界・権利関係
 用地仕入れの際、境界が不明確であったり、越境物が存在したりすることで、後の工事着工が遅れるケースがあります。
(3)土壌汚染や地中埋設物
 工場跡地などを購入した場合、後に土壌汚染や地中埋設物が発見され、浄化や撤去に莫大な追加費用がかかるリスクがあります。

3 契約後に発生しやすいトラブル

 契約締結後、あるいは引き渡し後に発生しやすいトラブルとして、以下の点が挙げられます。

(1)契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)の追及
 引き渡した建物に雨漏りがある、土地の土壌が汚染されているなど、契約の内容と品質・種類が適合しないことがあります。
 契約不適合があった場合、買主は、追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償請求を行うことが出来ることがあります。
(2)登記に関するトラブル
 「代金を支払ったのに所有権移転登記に必要な書類が交付されない」、あるいは「抵当権抹消登記がなされていない」といったトラブルが発生することがあります。
(3)支払遅延(債務不履行)
 買主からの代金支払いが期日通りに行われないことがあります。

4 契約解除・損害賠償請求の法的対応

 万が一、相手方が契約に違反した場合、あるいは自社が違反を問われた場合、法的対応は迅速に行う必要があります。

(1)契約の解除
 相手方が債務(支払い、引き渡し、修補など)を履行しない場合、原則として「相当の期間」を定めて履行を催告し、それでも履行がない場合に契約を解除できます。
ただし、「履行が不能である場合」や「特定の日時までに履行しなければ意味がない場合(定期行為)」は、催告なしで即時に解除が可能です。
(2)損害賠償請求
 契約違反によって被った以下のような損害を請求できます。
 ① 実損害
 契約のために支出した調査費用や手付金など。
 ② 逸失利益
 その取引が正常に行われていれば得られたはずの利益。
ただし、どこまでが賠償範囲に含まれるかは、契約内容や予見可能性によって判断が分かれるため、専門的な算定が必要です。

5 契約書作成・レビューによる事前リスク回避

 トラブルの多くは、「契約書の記載が曖昧であること」や「リスクの分担が不明確であること」に起因します。市販の雛形をそのまま使うのではなく、個別の事案に合わせた契約書を作成することが最強の防衛策です。

6 建設業の土地・建物の売買に関するトラブルを弁護士に依頼するメリット

 建設業の不動産取引において、弁護士を介入させるメリットは多大です。

(1)オーダーメイドの契約書作成
 取引ごとの特殊事情(土地の形状、権利関係、将来の開発計画)を反映した、抜け漏れのない契約書を作成できます。
(2)迅速なトラブル解決と事業継続
 トラブル発生時、当事者同士では感情的になりがちな交渉を、弁護士が代理人として冷静かつ法的に進めます。これにより、経営者は本業に専念でき、事業の停滞を防げます。
(3)複雑な関連法規への対応:
 民法だけでなく、宅地建物取引業法、建築基準法、都市計画法など、建設不動産に関連する特別法を網羅したアドバイスが可能です。

7 まとめ

 土地・建物の売買は、建設業にとって大きなチャンスであると同時に、最大のリスク要因でもあります。「これくらいは大丈夫だろう」という安易な判断や口約束が、後の大きな紛争の火種となります。
契約締結前の段階から弁護士によるリーガルチェックを受け、万全の体制で取引に臨むことが、貴社の利益と信用を守ることに繋がります。
土地や建物の売買に関するトラブルは、法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。

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